Model | Length | Line | Lure Weight | Max Drag | Guide |
NB574SS | 5'7" | PE3 - PE4 | 100g-200g | 5kg - 8kg | Fuji Titanium K Series |
早いもので発売以来11年目を迎えたEVOLUTIONシリーズ。昨年は10周年アニバーサリーモデルも限定発売し、好評を頂いた。10年一昔とは言うが、感無量の大きな節目だった。折角の節目なので、ロッドを作るということを少しだけお話させて頂こう。唐突だが、自社で設計、製造、販売を一貫して出来るメーカーと言うのは意外と少ない。特に小規模メーカーは委託製竿という形を取っているところが大半である。理由は、カーボンロッドの製造には大変な設備と専門的なノウハウが必要であり、クオリティの高いブランクを作ろうと思えば、常に機械のアップデイトとメインテナンスを行わなければならない。私がこの道で生きると定め、製竿して頂ける工場を探して交渉を繰り返していたのはもう15年ほども前のことになる。それまでは、海外からブランクを仕入れてロッドを作っていたが、流石に何時までも流用製竿は嫌だと思ったからである。頭に思い描く漠然とした理想像以外、何の知識も経験もない私に対して、殆どの工場が門前払いであった。それでも一社、少量から引き受けてくれる所があって、2つのモデルをお願いする事になった。どんな仕様のロッドにするか?
引き出しには何も入っていないので、近いイメージのサンプルを持参するしかない。「このロッドのここをもっと硬くして…」とか「ここはもっと長くして…」といった具合である。
そうして出来上がった2種のロッドは見事なまでの欠陥品だった。一本はティップ付近が折れ易く、もう一本は低負荷でバットから折れた。委託したメーカーさんもジギングロッドなど初めてで、ノウハウが無かったのも事実である。しかし、とにかく作りたい!その気持ちばかりが先に立ってしまい、冷静な視点を欠いていた。買ってくれたお客様たちには、大変な迷惑を掛けてしまい慚愧の念で一杯だった。その2種のロッドは直ぐに販売を打切ったが、戒めとして今も廃棄せずに倉庫に置いてある。
その一件で、ロッド造りへの情熱はすっかり委縮してしまうかに見えたが、当時のお客様は私以上に良いロッドを渇望されていた。また買うから絶対良いものを造って欲しいと多くの方に懇願された。そんなありがたい気持ちに応えるために、受験勉強よりも遥かに真剣に勉強した。ロッドブランクの設計はある種ブラックボックスであり、教えてくれる人など皆無だったが僅かに心得のある方から色々と学んだ。そして仕上げのガイドセッティング、エポキシ樹脂、接着剤、ラッピングスレッドや飾り巻きなど、仕事から帰って夜中まで練習と研究を行っていた。それなりにノウハウを積んで数年が経ったころ、九州の大手工場とブランク契約を取り付けることに成功した。ずっと昔から愛用していたメーカーであり、伝説のブランク設計者が在籍していた。残念ながら紹介された設計担当者は別の人だった。しかし、その中堅担当者、相当な変わり者だったけど頭脳は優秀だった。こちらも一歩も引かぬ気迫で交渉し、納得のいく形でOMASA625HSのブランクを造って頂いた。そのブランクは本当に強かった。折れにくいのではなく折れないと言っても良いぐらい強かった。ヒラマサジギングはキラージグと共にブームとなり、OMASAシリーズはよく売れた。
しかし、強いことだけが売りのロッドブランドで終わりたくはなかった。
出来るかどうかは問題外。軽くて丈夫な、全く新しいブランクの企画書を担当者に渡した。「そんな虫のいいものは…」という顔色だったが、ずっと考え続けてくれたのだろう。当時のオフショアロッドの常識ではまずありえない、細糸多重巻きブランクの提案を暫くして出してくれた。ホントにそれで丈夫で軽いロッドが作れるのか? 不安な中で実釣実験を繰り返す日々。
その頃の平戸は、オオマサパラダイス。豪竿をへし折っていくような大物が闊歩する場所だったから、この新しい試作ロッドは船頭に一笑に付された。アングラーも似たような反応だった。
ただひとり、外房から平戸に武者修行に来ていた、ある名手がこのブランクの可能を見てとった。「外房に使えます、絶対良いロッドになります」。
そのときからEVOLUTIONの開発は静かに歩みを進めることとなった。
ロッドを作る、それもブランクから。
メーカーを志す人の大きな夢だと思う。そのためには、運や資金はもちろん大切であり、なくてはならないものだ。しかし、何よりも大切なのは情熱、それも半端ではない情熱だ。それこそが人を動かす真の力である。
今も新しいロッドビルダーが生まれ、製品を作っているだろう。私が始めた頃とは、状況が大きく違うし、委託先のメーカー各社それなりにノウハウは積んでいるので、無難にしっかりしたブランクは出来ているようだ。しかし、ゼロから築く苦悩を経験していない者には、革命的なものなど作れないと思っている皮肉な自分もいる。ロッド造りは、あらゆる知識と経験が必要で奥は深いが、人との出会いに恵まれなければ上手くは行かない。
あの時、あの設計者が担当にならなかったら、意気投合して良いブランク造りにその能力を発揮してくれなかったら、MC worksは凡庸なロッド造りしか出来なかったのではなかろうかと思う。
実はその設計者、3年前からMC works’の一員となり、今も私の前でルアーを弄りながらブランク設計の構想を練っている。
縁とは不思議なものである。
【Length】5’7”
【 JIG 】100~200g
【 LINE 】PE#3~4
【 Drag 】8kg
574SSは幾多のモンスターサイズ実績でも分かる通り、もはや近海モデルとは言えないクラスレスロッドである。他のEVOLUTIONモデルに比較してややスロー気味なアクションは重めのジグや潮流の早い状況でもジグに十分なアクションを与えることが可能であり、見た目からは信じ難いバットトルクを持っている。
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